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少年は今日も夢を。

ただひたすらすきなことを。

長雨が連れてきた

春霖

ここ最近の春霖で、寒い日が続いていた。

朝、天気予報を観ずに家を出た時は太陽が雲から顔を出していたので、今日は晴れや、と思い、そのまま出てきてしまったのだが、仕事を終え、帰社しようと外に出ると大粒の雨が容赦なく地面に叩きつけられていた。

「傘忘れたやん、、、」

こういう時に限って忘れる傘。

いつもは欠かさず鞄に入れるのに、連日の雨で一度鞄から出してそのままにしてしまった。

「濡れて帰るか、、、」

『あ、あの!』

背広を1着亡きモノにする覚悟でエントランスを抜けようとした瞬間、突然呼び止められる。

そこには、毎朝笑顔で挨拶をしてくれる受付の彼女が立っていた。

彼女は社内で美人だと有名の受付嬢。

タイトスカートから伸びる脚は細くもなく太くもなくスラッとしていて、後れ毛がを余すことなく纏めた髪は綺麗な茶色に染まっている。

そんな彼女は社内でよく話題に上がるが、誰一人として素性を知る者はいない。

そんな彼女が自分に声をかけてくれた。

『私、傘2つ持ってるんで良かったら、、、!』

「え、いいん?」

『はい、傘片手に傘さすの恥ずかしいじゃないですか、、、』

そう言って俯く彼女。

彼女も帰るのか、いつも見かける服装ではない姿に少しドキッとする。

「まぁそれもそうやなぁ、、、じゃあさ、あのー、、、二人で同じ傘さして帰ろうや?」

それやったら片手に傘あっても恥ずかしくないやろ?

そう言うと彼女は少し耳を赤くして微笑んだ。

 

 

長雨が連れてきた

それは偶然なのか必然なのか