読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

少年は今日も夢を。

ただひたすらすきなことを。

必然なのかもしれない

春霖

「ほら、行こ?」

『あ、はい。どうぞっ』

そう言って静かに傘を開いて半分空けてくれる彼女。

「どっち方面なん?」

『こっち、です。』

「お、じゃあ一緒やわ」

つい、嬉しくなる。

『重岡さん、笑うと笑窪、できるんですね。』

「ん?せやねん。けど変なところにできるからみんなから窪みってイジられてるねん。」

『窪みって、、、(笑)あ、知ってます?笑窪の伝説。』

そう言って、俺を見上げる彼女。

綺麗な目が俺をしっかり見つめている。

「伝説?」

『はい、人って死後は冥界というところに行くんですけど、そこに着いた時、冥界の番人をしている女の人がスープをくれるんです。』

「スープ?」

『はい。忘情水っていうんですけど。そのスープを飲んだら生涯で出会った人全て忘れてしまうんです。』

「全員?」

『はい。家族も愛した人も友達も全員です。でもその代わりと言ったら何ですけど苦労することなく来世に転生できると言われているんです。』

「もし、そのスープを飲まなかったら、、、?」

『中にはいます。愛する人を忘れたくない、と。そういう人には過酷な試練が待っているんです。』

「試練?どんな?」

『それはそこに行った人のみぞ知る、です。冷たい河の中でたくさんの試練を受けるらしいです。その試練に1000年、耐えると前世の記憶と笑窪がつけられるんです。』

「1000年も!?」

『はい。そこまでして愛する人ともう一度出会いたい、ということです。だから、重岡さんは前世に出会った大好きで仕方ない人ともう一度出会うために1000年の試練を耐えた素敵な人、ってことなんですよ。』

そう言った彼女の目は俺を捕らえて離さなかった。

 

 

必然なのかもしれない

どこかで会ったかもしれない