読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

少年は今日も夢を。

ただひたすらすきなことを。

劣等感に苛まれた男

太宰治っておもしろい人ですよね。

彼女は突然そう言った。

太宰治人間失格の?」

『はい、そうです。本名津島修治。青森の出身です。』

「へぇ〜青森なんや。」

『はい。3回カルモチン自殺未遂を図って、4回目入水心中で亡くなられました。』

「え、カルモチンて何?」

あまり聞き慣れない単語が彼女の口からスラスラと紡がれる。

それは笑顔で話す彼女と合わなくて少しドキっとする。

『カルモチンは睡眠薬です。今風に言うとオーバードーズですかね?ちょっと違うと思うんですけど。1回目は芸妓さんと20歳の時に。父親貴族院議員だったので、いいとこの子っていうレッテルが苦だったみたいです。』

「へぇ〜、、、誰々の息子さんやん!みたいなのが嫌やったってことか。」

『そういうことだと思います。で、2回目は芸妓さんとの結納をした翌日に出会った既婚者の女性と。太宰は生き延びて、女性は亡くなったみたいです。』

「え、それってめっちゃ最悪なパターンやん。自分死にたかったのに相手死んでもうたみたいな。」

『太宰からすればまた死ねなかった、、、っていう絶望感でいっぱいですよね。まぁそんなことをしながら左翼の活動を精力的にしだして。それは3年くらいで終わっちゃうんですけど。その後に井伏鱒二の指導で中原中也とかと雑誌を刊行するんです。そこから執筆活動を開始するんです。』

「へぇ〜ここからなんや。」

『学生時代にも活動はしてたんですけどね。執筆活動に熱中し始めたのがこの頃ですね。』

「へぇ〜、、、で、次はいつ自殺未遂したん?」

何故か続きが気になって、彼女を少し急かす。

『3回目は太宰って大学に行ってたんですけど、授業料を払ってなくて除籍されてついでに新聞社の試験にも落ちちゃうんです。それがきっかけで。その直後に盲腸になって腹膜炎を併発しちゃって。その際に使われた麻酔をきっかけに薬物中毒になっていくんです。』

「え、急展開、、、」

『そうなんですよ。びっくりですよね。麻酔で薬物中毒になるなんて今じゃ考えられないですし。で、その頃芥川賞の最終選考に選ばれるんですけど、奇しくも逃してしまいます。』

「あ!誰かに手紙送ったやつ!」

『そうです。(笑)川端康成に送るんです。大悪党やと思いました。みたいな手紙なんですけど。』

「あれ?私を選んでくださいみたいな手紙じゃなくて?」

『それはその後ですね。翌年に晩年という著書を発表するんです。その際に川端康成にどうか賞を私に!みたいな手紙を送るんです。』

「それってなんでなん?賞が欲しかったから?」

『それは名誉挽回のためです。芸妓と結婚した上に自殺未遂を数回重ねてるわけですから。イメージ最悪ですよね?そのために賞が欲しかった、というのと、ただ単に薬を買うお金がなかったから賞金が欲しかったんです。』

「何その理由。最悪やん(笑)」

『そうなんですよ。最悪なんですよね。で、薬物中毒がひどくなってるんじゃないかって心配した井伏鱒二とかが結核治そうって騙して精神病棟に入院させて克服するんです。』

「へぇ〜、、、それで薬物中毒は治ったんや?」

『そうなんです。でも、その入院中に奥さんから浮気してたんですって告げられるんです。』

「何それ!ショック!」

『ですよね。太宰もショックを受けて奥さんと3回目の自殺を図るんですけど失敗して離婚しちゃうんです。』

「なんかもうひたすら散々やねんな、、、」

『もっと散々なんです。(笑)で、まぁ一回執筆から遠のくんですけど、また井伏鱒二が助けてくれて30歳の時に再婚するんです。』

「再婚すんの!?」

『はい(笑)嘘やん!?って感じですよね。そこからまた執筆活動を再開するんですけど、太平洋戦争があっていろいろ制限される中でも書き続けて、終戦後に愛人の元を訪ねるんです。』

「え、愛人おんの?」

『いたんです。その後にもう一人出会うんです。』

「え、愛人2人!?」

『はい。最後に出会った愛人と最期グッド・バイという小説の草稿と奥さんへあてた手紙と子供へのおもちゃを置いて入水自殺を図って亡くなるんです。』

 「壮絶すぎる人生やなぁ、、、」

『そうなんです。自分の家柄とか世間体とかを気にしてしまったが故に上手く生きれなかった人なんです。』

「かわいそうやなぁ」

『かわいそうなんです。でも太宰は一生懸命生きたんですよね。この不器用ながらもなんとか認められたいと頑張ってたのかなぁと思うと素敵だなって思うんです。』

そう言った彼女は、目をキラキラさせていた。

 

 

劣等感に苛まれた男

不器用すぎて好きなんです!と彼女は言った。